リン酸鉄リチウムイオン電池の充電
今回は近年多くのポータブル電源で使われている「リン酸鉄リチウムイオン電池」への充電についてお話しします。
「リン酸鉄リチウムイオン電池」の特徴については検索するとすぐにヒットするので、ここでは主だった特徴だけを箇条書きにします。
・三元系リチウムイオン電池と比べて安全性が高い
・鉛蓄電池と比べて軽量
・鉛蓄電池と比べて寿命が長い
・コストは鉛蓄電池より高いが、三元系リチウムイオン電池よりは安い
・鉛蓄電池とほぼ同じ電圧範囲で使える
・入手性が良い
・レアメタルを使っていない
つまり、「リン酸鉄リチウムイオン電池」は性能、コスト、環境性能のバランスが良いので近年急速に普及しているのだと考えられます。
そんな「リン酸鉄リチウムイオン電池」ですが、ソーラー充電システムに使うとなると少し困った問題が出てきます。それは、「低温下での充電」です。
ソーラー充電という事は当然ながらほとんどの場合、屋外にバッテリーを設置します。東日本より北の地方では冬季の気温は0℃を余裕で下回ります。一方「リン酸鉄リチウムイオン電池」充電温度範囲は一般的には0~45℃となっています。
何も対策しないと充電温度範囲を超えて充電をしてしまいます。
ここから悩ましい問題が出てきます。
①「屋外ではリン酸鉄リチウムイオン電池は使えませんね」となる
②「0℃以下で充電するとどうなるの?本当に使えないの?」と考える
③「0℃以下では充電を止めて、温度が上がったら充電すれば良いのでは?」と対策を講じる
④「0℃以下でも大丈夫かもしれない。使ってみよう」と行動に移す
最初から①の結論に至ってしまうと、それ以上なにもありませんので、このコラムでは除外します。
当社では②を最初に考えて、実験してみました。と言っても様々なメーカーの全ての「リン酸鉄リチウムイオン電池」を集めて実験する訳にも行かないので、数社のリン酸鉄リチウムイオン電池を取り寄せ、違いが有るか検証してみました。
温度は当社工場がある長野県安曇野市の冬を想定して-10℃に設定して実験しました。
結果は「かなりの違いが出る」でした。-10℃で充放電しても(容量は減るものの)問題なく使用できる電池もあれば、数回充放電しただけで使えなくなる電池もありました。
温度範囲を超えているので実験自体に否定的な意見もあるかと思いますが、とにかく性能に違いが出るという結果が得られました。
2023年12月に当社の麻績工場(長野県麻績村)にソーラー式LED看板を設置しました。
麻績村の最低気温は2024年1月に-7℃を記録していました。冬は月の半分ほどは0℃以下を記録しています。
このソーラー式LED看板に使用しているのはO社製のリン酸鉄リチウムイオン電池です。
一冬毎日充放電しても元気に動いています。
このO社製リン酸鉄リチウムイオン電池の低温下での実力はかなり良いのではないでしょうか。
写真1.麻績工場ソーラーLED看板
それでも寿命を縮める使い方をしている事に変わりはありません。もし、完全に安全な使用方法を選択したい場合はWSCに搭載されている温度制御機能を使えます。
温度制御機能を使うとWSCは0-45℃の範囲を超えると充電動作を停止して電池を守る事ができます。
(ただ、冬の寒い朝は晴天であることが多く、充電の視点からみると勿体ない感もあります)
また、高度な保温性能をバッテリー筐体に持たせればヒーターを制御してバッテリー全体を温める手法も有効かもしれません。
実際にそのような電池もありますし、これについては後々検証したいと思っています。